美女缶の思い出

妻夫木君の隣人は、イケメンでもないのに、毎日毎日、きれいな女の人と一緒。しかも、連れている女の人は、コギャル風、お姉さま風、果ては外人まで！　実にバリエーション豊かなのです。
"なんか、おかしい"
ある日、そう思った妻夫木君は、隣人の捨てたゴミをあさり、「美女缶」と書かれた大量の空き缶を見つけます。一体、この缶詰は何なのか。あの美女たちと、どんな関係があるのか。
とうとう、好奇心が抑えられなくなった妻夫木君。隣人の部屋に忍び込んでしまいます。そして、まだ開けられていない「美女缶」を盗んで来てしまいます。説明書を読みながら、恐る恐る、お風呂場で「美女缶」を"調理"すると・・・。
信じられないことに、お風呂場から出て来たのは、とんでもない美少女(臼田あさ美ちゃん)でした。我が目を疑う妻夫木君をよそに、ふつうに振舞うあさ美ちゃん。すぐに"そういうこと"をしようとして、初めは彼女を傷つけてしまうのですが、すぐに仲直り。
翌朝、朝ごはんを作ってくれたあさ美ちゃんは、学校へ。"一体、どういう設定になってるんだろう"。彼女のことを、もっと知りたいと思った妻夫木君は、附属のDVDで、彼女が美容師を目指していること、海が好きなことなどを知ります。そして、彼女に喜んでもらおうと、海へデートに誘います。海辺でデートをするふたり。美容師になりたいあさ美ちゃんが、妻夫木君の髪をカットしてあげたり。少しずつ打ち解けて行くふたり。すべては順調に進んで行くようでした。
ある日、「美女缶」に附属していたDVDの続きを見ていた妻夫木君は、彼女が期限付きの存在であることを知ります。残されたのは、あと、ほんの数日。ソファーで眠っているあさ美ちゃんの腰の辺りを見ると、期限を示すバーコードが・・・。はかない彼女の運命を知った妻夫木君は、眠っているあさ美ちゃんをそっと抱きしめるのでした。
ある朝、ひとりで食事していたあさ美ちゃんは、偶然、「美女缶」の説明DVDを見つけ、自分の正体を知ってしまいます。その頃、妻夫木君は、小さなアクセサリーショップでペンダントを買っていました。いつか海辺でデートした時に、あさ美ちゃんが欲しがっていたペンダント。彼女へのプレゼントにと思って部屋に帰ってみると・・・。机に置かれた「美女缶」の説明DVD。彼女が事実を知ってしまったことを悟った妻夫木君。と、そこへ、出張に行っていた彼の同棲相手が帰って来ます。
（ここでワンシーンあるのですが、"大落ち"なので記述しません。）

"大落ち"シーン

あさ美ちゃんを追って、雨の中を探し回る妻夫木君。すると、いつかの海辺の近くで、ずぶ濡れになって座っている彼女を発見します。見詰め合うふたり。そして、妻夫木君は手にしたペンダントを彼女に渡そうと近づき・・・。
とまあ、ホントに小さな小さな物語でした。物語の中のはかない存在の"彼女"と、デビューしたてのあさ美ちゃんのマシュマロなイメージが見事にマッチした作品。小さいがゆえに、強く強く心に刻まれた一作。役柄にハマっているあさ美ちゃんを見たとき"あ、これは売れるな。早耳ムスメのままでは居られないな"と、直感しました。嬉しい反面、"隣りの女の子"ではなくなってしまうことが、寂しく感じられました。これから、彼女はドンドン上へ上へと昇って行くことでしょう。"がんばれよ。でも、早耳ムスメの笑顔は無くすなよ"と願いながら見守る、2005年の初夏なのでした。